*某ツイッターに投稿した記事をまとめました。
まずは、日本中世を扱った二冊。中世の人々の生活、面白すぎることがわかる。
清水克行『日本神判史』
日本中世を中心に、神仏に罪の有無を問う裁判(熱湯に手を突っ込んで火傷したら有罪など...)は現代では一見不合理なものに見える。しかし、当時の人々にとっては共同体を維持するための合理的な手段であったというのが豊富な例とともに示される。視野が広がる一冊。
桜井英治『贈与の歴史学 儀礼と経済のあいだ』
中世の人びとの営みを、安易に「呪術」などに結びつけるのではなく、彼らの「理屈」を復元して理解する本。中世の「理屈」は現在を生きる我々のそれに較べて決して劣っているわけではない。この歴史家の主張が、引き締まったキレのある文体で示される。
桜井 英治
中央公論新社
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次は、源氏物語を題材にした文学・歴史本を二冊。私、平安時代ファンなのです。
立石和弘『男が女を盗む話―紫の上は「幸せ」だったのか』
『源氏物語』の源氏と若紫のように男が女を盗み出す話を、当時の視点から、そして現代の視点から解読する本。平安期の物語を題材に論じているので、平安貴族の社会の有り様を垣間みられます。
立石 和弘
中央公論新社
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『源氏物語の結婚 - 平安朝の婚姻制度と恋愛譚』
平安時代の婚姻制度研究をふまえて、源氏物語を読み解く試み。源氏と女たちの関係を正妻の地位をめぐる物語と読むのが新鮮でした。歴史を知ると、物語を一層楽しめることがよくわかります。
工藤 重矩
中央公論新社
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中公新書ではありませんが、平安時代入門として手軽なのは、川村裕子『平安女子の楽しい!生活』(岩波ジュニア新書)。平安時代の女子、男子の生活を、現代の私たちの日常生活に置き換えてわかりやすい言葉で説明してくれます。読んでいて楽しい心躍る一冊です。
川村 裕子
岩波書店
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最後に伝記を二冊。
福田千鶴『江の生涯』
通説では、徳川秀忠の正室 江は、家光の生母とされる。しかし、本書はその通説を覆そうとしていて非常にアクロバティックな議論が展開される。資料が乏しい中、武家社会の研究をふまえて丁寧に立論する著者の情熱と力量に感服。
福田 千鶴
中央公論新社
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古川隆久『昭和天皇―「理性の君主」の孤独』
「昭和天皇の実像を知りたい」という欲求に実証的に応える評伝。副題に「『理性の君主』の孤独」とあるが、まさに「孤独」と評するにふさわしい人生。
古川 隆久
中央公論新社
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これにて、中公新書の日本史紹介は終わり。他にもいい本がいろいろあると思うので、まずは棚をのぞいてみては。
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